土岐市駅から徒歩5分にある明治30年創業の角山製陶所さん。
絵付けを施した湯呑みを中心に代々作り続けられ、ものづくりの現場を間近に感じながら陶芸体験ができます。
面白く丁寧に指導される先生お二人は、5代目と6代目の角山製陶所の当主。
100年以上美濃焼を生み出してきた窯元で、是非陶芸体験をしてみませんか。
今回ご紹介するのは美濃焼の窯元、角山製陶所さん。
5代目当主の伊藤真さんにお話を伺いました。
明治30年創業。引き継がれてきた技術。
――美濃焼は地域によって作っているものが異なりますが、角山製陶所さんがある泉地区ではどのような形を主に作っていたのですか。
伊藤さん:泉地区では、茶碗や湯飲みが中心ですね。
土岐市のメインストリートに近かった為、一番よくお客さんが使うものを生産していました。
また茶碗や湯飲みは同じくらいの高さなので、窯を焼く際に使用するツクという柱のようなものが、同じ高さのものばかりで良かったという利便性も関係していると思います。
南に行けば行くほど、徳利や丼など作る形が変わっていきますね。
昔はリアカーを引いて商社さんが春日井まで行っていたと先代から聞いています。
名古屋から瀬戸に介して大きなメインストリートが通っていて、流通が便利だったので瀬戸には商社さんが行っても、土岐まで来なかったらしいと。
そこで、瀬戸に土岐市で作られたものを持って行って、名古屋の方に流通するという流れがありました。
陶器のことを「せともの」と呼びますが、これは瀬戸市で売られていたからこう呼ばれていて、「せともの」の中には土岐市で作られたものや美濃焼も含まれているという裏話もあります。
――伊藤さんで5代目と、とても長く続いている窯元さんですね。
先代はどのような製品を作られていたんですか。
伊藤さん:一番最初の1代目は貧乏徳利という、お酒や醤油をいれる瓶を特注で作っていたり、器や大きい壺を作っていたようです。
2代目は戦争に行ってしまったので不明ですが、3代目・4代目で湯飲みや茶碗を中心に作り始めて、僕が5代目で初めて陶芸体験を始めました。
手書きの絵付けを行ってきた窯元なので、形を作って細かい絵付けを施した、お寿司屋さんなどによく置いてある湯飲みを多く生産しています。
プロが作陶しているすぐ隣で、陶芸体験ができる場所
実際に作陶されている風景や、製品を焼いている窯を見ながら、陶芸体験ができる数少ない窯元さんです。
どんなお客さんも、体験した後は笑顔になって帰っていくような陶芸教室です。
――陶芸教室を始めたきっかけはありますか。
伊藤さん:実は20年程前から陶芸体験をおこなっていました。本格的に始めたのはコロナ禍に入るちょっと前の3.4年ほど前。SNSや体験サイトを通じて沢山のお客さんが来てくれるようになりました。
コロナ禍に入って、実際に体験をすることに価値を感じる人が多くなってきた時代の流れもあると思います。
角山製陶所に訪れてもらい、ただ陶芸体験をしてもらうだけでなく、せっかくなので土岐市にある他のお店や飲食店にも立ち寄ってもらい地域を応援したい。お客さんにも楽しんでもらいたいという思いから、歩いて行けるくらい近くの飲食店などを紹介しているマップも作ったりしてますよ。
――地域を応援するのと同時に、お客さんに楽しんで帰ってもらうことを第一に考えているんですね。
伊藤さん:最初は口数が少ないお客さんでも、何かきっかけがあると堰を切ったように話しだしてくれることがあります。
そうゆう時が一番、お客さん自身を引き出せたと思えてうれしいですね。
記念日や、家族で過ごす久しぶりの時間。そんな大切なそれぞれのお客さんの時間をただ陶芸をやって帰るだけでなく、楽しく過ごして帰ってもらいたいと考えています。
――陶芸体験を通じてどのようなことを知ってもらいたいと思っていますか。
伊藤さん:一番大事な感じの内容ですね。笑
かっこよく言うと、小さい子供たちに作る楽しみや陶器に触れて体験して、陶器を好きになってもらいたい。
子供の頃に楽しいと感じたものは、大人になった時にも好きなものになると思うので、これからの時代の陶器離れを防ぎたいと考えています。
来てくれるお客さん皆に楽しんで帰ってもらいたいです。土岐に来て陶芸を体験して、しんどかったという思い出だけではもったいないので+αどうやったら楽しんで帰ってもらえるかいつも考えています。
窯元を存続してゆく為の工夫
――今後どのようなことに挑戦していきたいですか
伊藤さん:陶芸体験に来たお客さんが、買って帰れるような売り場を充実させたり、お客様を楽しませる工夫を行ってゆきたいですね。
ただ、一個のことだけに集中してしまうとどうしても行き詰ってしまうので、
水ゴテと型で作る湯飲み・ロクロ成形で作る注文品・オブジェなどの特注品制作・陶芸教室の4つの草鞋で仕事を行っています。
――なんでもできてすごいですね。
伊藤さん:技術があれば何とでもなると思ってやっています。笑
時代が変わると立ちいかなくなるので、いろんなところにウェイトを置いて仕事を行っていきたいですね。
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子供たちに作る楽しみを教えることや、陶芸体験をして陶器を好きになる人を増やすことは、伝統産業の存続にもつながると感じました。
一歩製陶所の中に入ると、ものづくりをしている現場の空気感を感じることが出来ます。
予想以上に広く迷路のような建物で、所々に「もろ板」というろくろを引いた製品を運ぶ板が壁に貼り付けてあります。
明治から続く窯元の歴史を感じながら、陶芸を教えていただけるのはとても貴重なこと。
土岐市の、美濃焼のものづくりの精神を、実際に体験し感じてみてください。